ももさん「大切で愛おしいあなたへ」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

ももさん「大切で愛おしいあなたへ」

『隣で寝息をたてて、気持ち良さそうな寝顔を見ると、胸がぎゅうっと締め付けられて幸せな気持ちになるよ。今日もありがとう。大好きだよ。』
 

目が覚めた。お腹が異様に空く。全身が重く、痛い。お腹を触り、我にかえった。

「そうだ私、あなたを産んだんだ。」 
 

数時間前の出来事を振り返る。
産まれて間もなく呼吸が上手くできず、低酸素状態になったあなたはすぐに保育器に入った。
妊娠・出産が初めてだった私は、ぼんやりとした感覚のまま、陣痛とお産によりボロボロになった身体で、ただ1人、入院部屋へ戻ったのだ。産後すぐ、我が子と離れてしまった。
あなたは今、何をしているのだろう。元気だろうか。泣いていないかな。早く会いたい。苦しい。
お腹は空いているはずなのに、なぜか食事が喉を通らない。

頭の中であなたのことを考えているうちに、あっという間に面会時間になった。
小さな保育器の中で、一所懸命呼吸をしている姿が見えた。

「かわいい。小さい。どうしてあげたらいいのだろう。」

固まって一点を見つめる私に

「たくさん触ってあげてね。」

と看護師さんが声をかけてくれた。

手を伸ばした。初めて触れた。温かい。背中は柔らかい毛で覆われている。ふにゃふにゃしている。
これ以上触れたら、壊れそう。でも触れていたい。ほっぺを触ると口をぱくぱくさせた。愛おしい。早く自分の腕の中で抱っこしたい。

 
初めての我が子。妊娠が分かった時から大好きが止まらなかったが、目の前にするとより一層愛おしく感じる。
この感情を、パパと分かち合いたい。でもコロナ禍なので、できない。そしてあっという間に面会時間は過ぎていく。

「ママに会えて良かったね。」

“ママ”という言葉に、嬉しさが込み上げる一方で、親としての責任を感じた。

また1人、部屋に戻った。一緒に居れない寂しさと申し訳なさが込み上げてくる。孤独で胸が苦しくなる。
優しく背中を撫でることしかできなかった。何かできることはないのだろうか。自分の無力さを感じた。

真夜中、他の赤ちゃんの泣き声で目が覚めた。みんな授乳室で自分の子どもに授乳している中、私は搾乳機で母乳を搾り取っていた。
もちろん目の前にあなたはいない。周りのママたちと差が出ているような焦りと不安を感じた。母乳もなかなか出てこなくて、涙だけが出てきそうになる。自分はダメ親なのかもしれない。心が折れそうになった。

そんな時、陣痛の時にずっと背中をさすってくれた看護師さんが

「大丈夫?」

と言って、隣に座って話を聞いてくれた。

「辛いよね。不安だよね。」

気持ちを受け止めてくれる人がいるだけで、心が軽くなり、自分と向き合うきっかけになった。

出産は、本当に命がけだ。今更ながら自分を産み、育ててくれた両親に感謝だと痛感した。
出産は、奇跡なんて綺麗事で言い表せないくらい想像を遥かに超える時間だったけど、そんな痛みや不安や孤独なんてどうでもいいって思うくらい小さくて愛おしくて自分より大切な存在がまたひとつ増えた。

 

保育器生活を終え、無事に退院できた。
パパは、初めてあなたを抱いた時、幸せに溢れた満面の笑みで、強く強く抱きしめた。
じじも、ばばも、みんなみんな、あなたのことが大好き。産まれてきてくれてありがとうと心から思い、強く優しく成長してほしいと切に願い、これから先、幸せであってほしいといつも祈っている。


無事に生後10ヶ月を迎えた今、順調に成長し、ハイハイで家中を探検している。
保育器に入っていたとは思えないくらい離乳食を沢山食べ、雄叫びをあげ、ママの肩をカミカミかじる。
子どもの生命力は、強い。ママ、ママと手をあげ、抱っこを求める姿は、この上なく愛おしい。
だんだん重くなってきた身体を持ち上げ、ぎゅっと抱きしめる瞬間が幸せだ。

初めてママになって、あなたから教えてもらうことがたくさんある。
嬉しいことも悲しいことも、これからも一緒に受け止め、時には見守りながら、認めていきたい。

そして毎晩、すやすや眠るあなたに頬を寄せながら声をかける。

「今日もありがとう。大好きだよ。」
 


 

青森県 ももさん
題名:大切で愛おしいあなたへ
子どもへ伝えたい言葉:「隣で寝息をたてて、気持ち良さそうな寝顔を見ると、胸がぎゅうっと締め付けられて幸せな気持ちになるよ。今日もありがとう。大好きだよ。」